筆者自身は、金融取引に過度な規制は不要だと思っています。何事もそうですが、取引には常に自己責任がついて回るわけで、FX取引も同様です。であれば過剰な規制は社会的コストが増えるほか、健全なFX業界の成長を妨げますし、FX投資家の成熟がいつまで経っても進まないことになります。
加えて、そうした規制が本当に取引健全化に役に立つのか、というそもそも論もありますしね。
さらにFX取引の場合、とかくその投機性が問題視され、徐々に規制を強められてきた経緯があります。そもそもなぜ投機的であったらマズイのか今一つ分かりませんし(株取引だって投機的な投資はいくらでもできます)、公営ギャンブルである競馬・競艇・競輪より平均的な勝率ははるかに高いですしね。もちろん宝くじよりFXの方が当たりやすいわけです。
とするとそこまで神経質になる必要はないと思いますし、そもそもFXユーザーがこうした規制を求めているとも思えませんしね。であれば、何のための規制か、ということになります。
ここ10年で大きく伸びたサービスであることから、そうやって当局から過剰に目の敵にされるのも「産みの苦しみ」と言えるのかもしれませんが。
さてそんなFX取引を巡る規制ですが、金融庁と金融先物取引業協会は新たな規制案を検討中のようです。報道によればその柱は以下3つのようですね。
1.不正なスリッページ=滑りの禁止
2.超短期のバイナリーオプションの禁止
3.FXシステムトレードの監視強化
ということです。
この中で最も気になるのはやはり1つ目の不正なスリッページの禁止ですね。いわゆる「滑り」ですが、注文時と約常時の為替レートが変わってしまうアレです。
もちろん変動の激しい為替相場のことなので、こうしたレートの変化が起こるのはやむを得ない面はありますが、問題は一部のFX会社が、常に自社に有利なレートとなるように意図的に滑りを発生させている、という疑惑があるのです。
本来、こうした滑りはFX会社にとって、より有利な方向に動く場合もあれば、より不利な方向に動く場合もあり、それらを総合すれば基本的にはプラスマイナスゼロに、つまりFX会社にとっても、ユーザーにとってもフェアになるはずです。しかし意図的に、いつも有利な方向に動かされているとすれば、ユーザーにとっては不利な条件で取引させられていることになります。
この滑りの問題は、ユーザーにとって、そうした不適切なレート配信をしている会社がどこなのかさっぱり分からない、という点ですね。いくつかのFXサービスを併用していれば、全く同じタイミングで取引することで見えてくることがあるのかもしれませんが、しかし一般的なFXユーザーではそこまで検証するのは難しいですね。
だとすると、そうした疑いのあるFX会社の名前を明かしてくれるだけで、ユーザーにとっては大変ありがたいわけですが、新しい規制の中身としては、スリッページ自体は認めるものの、FX会社にとって不利なレートとなっても約定できるよう義務づけると共に、従わない場合は最大1億円の過怠金が課せられる、とのことですね。
どこまで実効性があるのかは分かりませんが、この不正スリッページはユーザーに分かりにくいという点ではかなり悪質ですからね!ユーザーが安心して取引できる環境を期待したいと思います。
一方、2つ目の、超短期のバイナリーオプションについては、禁止しないといけない理由がさっぱり分かりませんね。投資と投機に明確な区別はありませんし、超短期はダメだけれど、短期はOK、という合理的な理由はないはずです。
3つ目のシステムトレードの監視については、野放しにするのではなく一定の監視を行う、というのは悪いことではないと思いますが、それほどメジャーな取引手法ではありませんからね。こちらもやはりそれほど目くじらを立てる必要はないと思いますが、いかがでしょうか?
いずれにしてもこの規制のハイライトはやはり、一番最初の「不正なスリッページ=滑りの禁止」の部分ですね。FXユーザーが馬鹿を見ないよう、ぜひ取引環境を透明化してほしいものです。
新しい規制の実効性に期待したいと思います。